夜光雲

やこううんyakouun

地球大気の最も高い高度約80kmに現れる、夕暮れや明け方に青白く輝く雲。極めて稀で、通常は高緯度地方で観測される。

夜光雲のイメージ
イメージ画(当サイト制作)
分類
その他の雲(国際雲図帳)
分布
高緯度地方(緯度50度以上)、主に夏の極域
高度
約80km(中間圏)
外観
青白く輝く、薄い雲。波状や帯状の構造が見られることがある。
発生過程
中間圏の極低温下で水蒸気が氷晶化して形成される。

解説Overview

夜光雲(やこううん、英: Noctilucent cloud)は、地球大気の最も高い高度、約80km付近に出現する雲である。この高度は中間圏と呼ばれ、通常の気象現象が起こる対流圏(高度約10km以下)とは大きく異なる。夜光雲は、太陽が地平線下にある薄明時に、高高度に残る太陽光を反射して青白く輝くため、その名がついた。地上が暗くなっても、上空の雲だけが照らされて見えるのである。

夜光雲の存在が最初に報告されたのは1885年である。1883年のクラカタウ火山の大噴火の後、世界各地で異常な夕焼けや空の現象が観測され、その中で夜光雲が注目されるようになった。当初は火山噴火の影響によるものと考えられたが、その後、火山活動とは無関係に出現することが確認された。

夜光雲は、主に緯度50度以上の高緯度地方で見られる。特に夏の極域で頻繁に観測され、北半球では6月から8月頃、南半球では12月から2月頃に出現することが多い。これは、中間圏の気温がこの時期に最も低くなり、水蒸気が氷晶となって雲を形成しやすい条件が整うためである。夜光雲は、非常に薄い氷の結晶からなり、その粒子は約50ナノメートルと極めて小さい。そのため、太陽光を散乱させて青白く見える。

夜光雲の研究は、20世紀後半から人工衛星やロケットによる観測が進められ、その発生メカニズムや地球大気の変動との関連が調べられている。近年では、気候変動の影響で夜光雲の出現頻度や観測地域が変化している可能性が指摘されている。また、夜光雲は他の惑星でも観測されており、火星やタイタンでも同様の雲が確認されている。

日本では、夜光雲は主に北海道など高緯度地域で稀に観測される。国内での観測例は少なく、条件が整わなければ見ることは難しい。しかし、SNSなどを通じて観測報告が共有されることもあり、関心を持つ愛好家も増えている。夜光雲は、その高度の高さから、地上の気象とは独立した現象として扱われることが多く、気象庁の雲の分類には含まれないが、国際雲図帳では「その他の雲」として記載されている。

夜光雲の観測は、通常の雲と異なり、日没後や日の出前に限定される。太陽が地平線下約6度から16度の範囲にあるとき、地上は暗くても上空の雲が照らされる。そのため、観測には空が十分に暗い場所が適している。また、光害の少ない環境で、北西または北東の空低くに見えることが多い。

伝承・史料Lore

クラカタウ火山との関連: 1885年、インドネシアのクラカタウ火山の大噴火(1883年)の後、世界各地で異常な夕焼けが観測され、その中で夜光雲が初めて報告された。当時は火山噴出物の影響と考えられたが、後に火山活動とは無関係に発生することが判明した。 名称の由来: 「夜光雲」は、太陽が地平線下にある薄明時に、高高度で太陽光を反射して光る様子から名付けられた。英語名の「Noctilucent」はラテン語の「nox(夜)」と「lucere(光る)」に由来する。 観測の歴史: 19世紀末から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパやロシアで組織的な観測が始まり、その後、人工衛星による全球観測が行われるようになった。

出典・参考文献References

  1. International Cloud Atlas World Meteorological Organization (WMO) 2017WMO 国際雲図帳 該当雲属(cirrostratus)2026-09-19
  2. 雲のカタログ 村井昭夫・鵜山義晃(草思社) 2011空がわかる全種分類図鑑。全雲形の写真と分類
  3. 雲を愛する技術 荒木健太郎(光文社) 2017雲の生成と見分け方
  4. 一般気象学 小倉義光(東京大学出版会) 1999第2版。雲と降水の物理
  5. 予報用語(気象庁) 気象庁気象庁 予報用語 目次(雲・天気の用語)2026-09-19

ランキング順位Rankings

よくある質問FAQ

夜光雲はどこで見られますか?

主に緯度50度以上の高緯度地方で、夏の時期に観測されます。日本では北海道などで稀に見られることがあります。

夜光雲はなぜ光るのですか?

太陽が地平線下にある薄明時に、高度約80kmの中間圏に存在する氷晶が太陽光を反射するため、地上が暗くても青白く輝いて見えます。

夜光雲は気象庁の雲の分類に含まれますか?

気象庁の雲の分類には含まれていません。国際雲図帳では「その他の雲」として記載されています。

最終更新: · 編集: そらのなまえ 編集室