巻雲
巻雲は、対流圏上層に発生する白く細い毛状の雲で、国際雲図帳の十種雲形の一つである。

- 分類
- 巻雲(Cirrus)
- 分布
- 世界中
- 高度帯
- 高層(8,000–15,000 m)
- 外観
- 白く細い毛状、線状、かぎ状
- 発生過程
- 上層の氷晶からなる
- 降水
- 通常降水なし
解説Overview
巻雲は、国際雲図帳における十種雲形の一つで、巻層雲や巻積雲と同様に上空の高い高度に現れる雲である。その名は、絹のように細く白いことから「巻(けん)」の字が当てられ、英語では cirrus と呼ばれる。ラテン語で「巻き毛」を意味する cirrus に由来し、毛状の外観をよく表している。
発生する高度はおおむね 8,000 メートルから 15,000 メートル程度で、対流圏の上層に位置する。この高度は気温が非常に低く、雲を構成する粒子は氷晶である。そのため、巻雲は氷晶雲に分類される。氷晶は光をよく通すため、雲全体は白く輝いて見え、薄いものでは空の青さが透けて見えることもある。
外観は、まっすぐに伸びた線状のもの、ほうきで掃いたような形、かぎ状に曲がったもの、房状に集まったものなど多様である。風の影響を強く受け、上空の強い風によって流されるため、形は刻々と変化する。巻雲が空に広がるのは、温暖前線の接近に伴うことが多く、天気が下り坂に向かう兆候として古くから観察されてきた。
日本では、巻雲は「いわし雲」や「うろこ雲」と混同されることがあるが、これらは主に巻積雲を指す俗称であり、巻雲とは区別される。また、地域によっては「はね雲」や「すじ雲」など、その形状に基づいた呼び名がある。
観測の歴史は古く、19世紀初頭にイギリスの気象学者ルーク・ハワードが雲の分類を提唱して以来、巻雲は独立した雲属として扱われてきた。現在では、世界気象機関(WMO)が発行する国際雲図帳によって、その定義や分類が標準化されている。人工衛星による観測では、巻雲が地球の放射収支に影響を与えることが知られ、気候変動研究においても注目される。
日本では気象庁が「雲の観測と分類」の中で巻雲を扱い、その特徴や見分け方を解説している。巻雲は、晴れた日にも見られる身近な雲でありながら、上空の大気の状態を反映する指標として、気象学上重要な意味を持つ。
伝承・史料Lore
古来の呼称: 平安時代の随筆『枕草子』には「雲のさま々々」として、細く長くたなびく雲が記されており、巻雲を指すと考えられる記述がある。
観測の記録: 江戸時代の気象観測記録『晴雨考』には、巻雲の形状と天候の関係についての記述が散見される。
天気の前兆: ヨーロッパでは「馬尾雲(mare's tails)」と呼ばれ、嵐の前触れとして恐れられた。日本でも「雲が帚(ほうき)のようになると風が吹く」という言い伝えがある。
出典・参考文献References
- 『International Cloud Atlas』 World Meteorological Organization (WMO) 2017 — WMO 国際雲図帳 該当雲属(cirrus)(2026-09-19)
- 『雲のカタログ』 村井昭夫・鵜山義晃(草思社) 2011 — 空がわかる全種分類図鑑。全雲形の写真と分類
- 『雲を愛する技術』 荒木健太郎(光文社) 2017 — 雲の生成と見分け方
- 『一般気象学』 小倉義光(東京大学出版会) 1999 — 第2版。雲と降水の物理
- 『予報用語(気象庁)』 気象庁 — 気象庁 予報用語 目次(雲・天気の用語)(2026-09-19)
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よくある質問FAQ
巻雲はどのくらいの高さにできますか?
通常、地上から8,000メートルから15,000メートル程度の高層に発生します。
巻雲と巻積雲の違いは何ですか?
巻雲は毛状で細長いのに対し、巻積雲は小さな鱗状や波状の塊が集まった形をしています。
巻雲が見えると天気は悪くなりますか?
巻雲は温暖前線の接近に伴って現れることが多く、天気が下り坂に向かう兆候とされることがあります。
最終更新: · 編集: そらのなまえ 編集室