穴あき雲
穴あき雲は、積雲や層積雲などの雲に円形または楕円形の穴が開き、その中心から尾を引くように降水が落ちる現象を伴う雲である。

- 分類
- 層積雲、高積雲、巻積雲などの変種
- 分布
- 世界中で観測されるが、寒冷な地域や安定した成層状態のときに見られやすい
- 高度帯
- 中層から下層
- 発生過程
- 過冷却水滴の凍結とカスペルスキー・グリーンウォルド効果
- 降水
- 尾を引く降水(ヴィルガ)を伴うことがある
解説Overview
穴あき雲は、比較的薄い雲を構成する水滴が過冷却の状態にあるとき、何らかの原因で一部が凍結し、周囲の水滴を蒸発させながら成長して氷晶の塊となり、落下する過程で雲に穴を開ける現象である。地上からは、雲の板に丸い穴がぽっかりと空き、その中心からヴィルガ(尾を引く降水)が垂れ下がるように見える。穴の縁はしばしば氷晶からなる薄い雲で縁取られ、時間とともに穴が拡大することがある。
この雲は、国際雲図帳ではカスペルスキー・グリーンウォルド効果と呼ばれる機構によって説明される。すなわち、雲内の過冷却水滴が何らかのきっかけで凍結し、その氷晶が周囲の水滴を昇華・蒸発させて成長する際、潜熱放出によって局所的な上昇流が生じ、さらに多くの水滴を凍結させるという連鎖が起こる。その結果、円形の穴が形成され、氷晶が落下して尾を引く。飛行機の通過が引き金となることもあり、その場合には穴の位置が飛行経路に沿って並ぶことがある。
観測される高度帯は主に中層から下層にかけてで、層積雲や高積雲、まれに巻積雲でも見られる。発生には、雲層が薄く、かつ過冷却水滴を含むことが必要であり、気温が0℃から-10℃程度の範囲で起こりやすい。日本では、冬から春にかけての比較的安定した天気の日に観察されることが多く、北海道や東北地方など寒冷な地域で報告例が多い。しかし、日常的に目にする機会はそれほど多くなく、気づかれないまま消えてしまうこともある。
穴あき雲という名称は、その見た目から比較的新しく定着した呼称であり、古い気象学の文献には「穴の開いた雲」や「穿孔性雲」といった表現が見られる。近年はSNSなどを通じて「穴あき雲」として広く知られるようになり、その珍しさから写真が話題になることもある。しかし、気象学的には特異な現象ではあるが、天気の急変を示すものではなく、通常は数分から数十分で消滅する。
この雲は、その成因が比較的最近解明されたこともあり、一般向けの気象解説では「不思議な雲」として紹介されることが多い。しかし、科学的にはカスペルスキー・グリーンウォルド効果という明確な物理過程に基づく現象であり、観測やシミュレーションによる研究が進められている。
伝承・史料Lore
航空機と穴あき雲: 穴あき雲の発生には航空機の通過が関与することがあり、プロペラ機やジェット機の排気や翼端渦が過冷却水滴の凍結を促すと考えられている。
古い記録: 20世紀前半の気象記録には、穴あき雲に類似した現象が「雲の穴」として散見され、当時は原因不明とされていた。
国際雲図帳: 2017年版の国際雲図帳で、穴あき雲は「カスペルスキー・グリーンウォルド効果」によるものとして記載され、正式な用語として認められた。
出典・参考文献References
- 『International Cloud Atlas』 World Meteorological Organization (WMO) 2017 — WMO 国際雲図帳 該当雲属(altocumulus)(2026-09-19)
- 『雲のカタログ』 村井昭夫・鵜山義晃(草思社) 2011 — 空がわかる全種分類図鑑。全雲形の写真と分類
- 『雲を愛する技術』 荒木健太郎(光文社) 2017 — 雲の生成と見分け方
- 『一般気象学』 小倉義光(東京大学出版会) 1999 — 第2版。雲と降水の物理
- 『予報用語(気象庁)』 気象庁 — 気象庁 予報用語 目次(雲・天気の用語)(2026-09-19)
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よくある質問FAQ
穴あき雲はどのようにしてできるのですか?
雲を構成する過冷却水滴が何らかのきっかけで凍結し、その氷晶が周囲の水滴を蒸発させながら成長する過程で、雲に穴が開きます。この現象はカスペルスキー・グリーンウォルド効果と呼ばれます。
穴あき雲はどのくらいの頻度で見られますか?
それほど頻繁に見られるものではなく、条件が整ったときに稀に発生します。寒冷な季節や安定した成層状態のときに観測されやすいです。
穴あき雲は飛行機が原因でできることがありますか?
はい、航空機の通過が引き金となって発生することがあります。その場合、穴の位置が飛行経路に沿って並ぶことがあります。
最終更新: · 編集: そらのなまえ 編集室