飛行機雲
航空機の排気や翼の先に生じる人工的な雲。

- 分類
- 人為起源の雲
- 分布
- 全球(航空機の飛行高度に依存)
解説Overview
飛行機雲は、航空機が上空を飛ぶ際にその航跡に沿って発生する雲である。国際雲図帳では「航空機によって生成される雲」として扱われ、自然の上昇気流ではなく人間活動に起因する点で他の雲と区別される。
発生の仕組みは二つに大別される。第一に、ジェットエンジンの排気に含まれる水蒸気が、周囲の低温・低圧環境で凝結・凍結して氷晶となるもので、一般に「排気飛行機雲」と呼ばれる。第二に、翼の後縁や翼端で空気が急膨張し、断熱冷却によって水蒸気が凝結するもので、「空力飛行機雲」や「翼端渦雲」と呼ばれる。後者は揚力の大きい離着陸時や旋回時に見られやすい。
飛行機雲ができる高度は、対流圏上部から成層圏下部にかけての高度約8,000メートルから12,000メートルに及ぶ。この層は気温が氷点下40度以下になることも多く、水蒸気は直ちに氷晶へと変わる。氷晶は周囲の空気の湿度が高いほど長く残り、逆に乾燥していると数秒から数十秒で消える。この寿命の長短は、その高度の湿度状態を推測する手がかりとして気象学で利用される。
日本では古くから「飛行機雲」の呼称が定着しているが、地域によっては「飛行機の糸」「空の煙」などと呼ぶこともある。文献によっては「航空機雲」という学術的な訳語も見られる。
気象庁の予報用語では、飛行機雲は「航空機雲」として分類され、天気の観測では自然雲と区別される。観測の現場では、飛行機雲が自然雲と誤認されることを避けるため、その形状や出現高度、移動の有無などが確認される。
現代では、飛行機雲は気候変動との関連でも注目される。航空機の排気に含まれる水蒸気や微粒子が上空で雲を形成し、地球の放射収支に影響を与える可能性が指摘されている。ただし、その効果の大きさや正負については研究が続いており、確定した結論は得られていない。
観察の際は、飛行機雲が発生した時刻、高度、持続時間、周囲の自然雲の状態を記録すると、気象観測の資料として価値が高まる。写真撮影では、逆光を避け、雲の輪郭が明確に見える角度を選ぶとよい。
伝承・史料Lore
日本での呼称: 古くは「飛行機の煙」とも呼ばれ、大正時代の新聞記事にもその記述が見られる。 観測記録: 気象庁の観測指針では、飛行機雲を「航空機雲」として記録するよう定められている。 国際的な扱い: 世界気象機関の国際雲図帳では、飛行機雲は「人為起源の雲」として独立した項目で解説されている。
出典・参考文献References
- 『International Cloud Atlas』 World Meteorological Organization (WMO) 2017 — WMO 国際雲図帳 該当雲属(cirrus)(2026-09-19)
- 『雲のカタログ』 村井昭夫・鵜山義晃(草思社) 2011 — 空がわかる全種分類図鑑。全雲形の写真と分類
- 『雲を愛する技術』 荒木健太郎(光文社) 2017 — 雲の生成と見分け方
- 『一般気象学』 小倉義光(東京大学出版会) 1999 — 第2版。雲と降水の物理
- 『予報用語(気象庁)』 気象庁 — 気象庁 予報用語 目次(雲・天気の用語)(2026-09-19)
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よくある質問FAQ
飛行機雲はなぜできるのですか?
航空機の排気に含まれる水蒸気が上空の低温で凝結・凍結するか、翼の周囲で空気が断熱冷却されて水蒸気が凝結するためにできます。
飛行機雲が長く残るのはなぜですか?
その高度の空気が湿っていると氷晶が蒸発しにくく、長く残ります。逆に乾燥していると短時間で消えます。
飛行機雲は天気の予報に使えますか?
飛行機雲の持続時間から上空の湿度を推測できるため、間接的に天気の変化を予測する手がかりになることがあります。
最終更新: · 編集: そらのなまえ 編集室