真珠母雲
高度20〜30kmの成層圏下部に、極域の冬季に出現する極めて薄い雲。真珠母のような虹色の干渉色を示す。
- 属
- 成層圏雲(極成層圏雲)
- 種
- なし
- 変種
- なし
- 副変種
- なし
- 高度帯
- 成層圏下部 約20〜30km
- 降水
- なし
- 外観
- 真珠光沢あるいは虹色の干渉色、薄い帯状・波状
- 関連する雲
- 巻雲、巻層雲、極成層圏雲
解説Overview
真珠母雲は、成層圏の下部、高度およそ20〜30kmに出現する雲である。極域の冬季に限られ、地上から観測できるのは太陽が地平線近くにある薄明の時間帯に集中する。雲としては非常に薄く、肉眼では巻雲や巻層雲に似るが、真珠母(しんじゅぼ)のように淡い虹色の干渉色を呈することが名の由来である。
この雲が通常の雲と大きく異なるのは、その生成高度である。対流圏の雲は高度10km前後までに限られるが、真珠母雲はそのはるか上、成層圏に生じる。成層圏は通常きわめて乾燥しており、雲が発生するには温度が約-78℃以下まで下がる必要がある。その条件が整うのは、冬の極域成層圏に形成される極渦の内部であり、特に山脈を越える風が励起する大気重力波が局所的な冷却をもたらす場所で発生しやすい。
雲の構成粒子は、氷晶または硝酸と水の混合物(硝酸三水和物)とされる。ただし、観測例によって組成の推定は異なり、詳細はなお研究対象である。出現高度が高く太陽光の散乱角が特殊なため、朝焼けや夕焼けの空に、真珠光沢または虹色の縞として見えることがある。日本では北海道など高緯度地方で稀に観測され、国内の気象庁による公式な分類用語としては用いられていない。
国際的には、世界気象機関(WMO)の国際雲図帳において、成層圏に生じる特殊な雲として位置づけられている。英語では polar stratospheric cloud(極成層圏雲)あるいは nacreous cloud と呼ばれる。nacreous は「真珠母の」を意味する。
現在、真珠母雲は美しい空の現象として写真撮影の対象になる一方、極域成層圏の化学過程、とくにオゾン層破壊と関連づけて研究されている。雲粒子の表面で塩素化合物が反応し、オゾンを破壊する活性種を生成することが知られており、極域の春季にオゾンが大きく減少する一因となる。したがって、真珠母雲は観測対象であると同時に、成層圏大気化学を理解するうえで重要な指標でもある。
なお、日本で「真珠母雲」の名が一般に知られるようになったのは比較的近年で、明治・大正期の気象学書には「真珠雲」などの表記も見られる。命名や分類の歴史は、極域観測の進展とともに変化してきた。
伝承・史料Lore
明治期の気象学書: 日本では「真珠雲」の名で紹介された例がある。当時は成層圏という概念自体が確立途上であり、その正体は未解明だった。
極域観測の記録: 南極や北極の観測基地では、冬季に真珠母雲が観測され、その高度と組成が調査されてきた。オゾンホール研究の進展とともに注目された。
写真家の記録: 北欧やカナダなど高緯度地方で、薄明時に空全体を染める真珠母雲の写真が多数残されている。日本では北海道での観測例が少数ながら報告されている。
出典・参考文献References
- 『雲の観測と分類』(気象庁) 2017国際雲図帳2017年版に準拠した分類。成層圏雲に関する記述を含む。
- 『国際雲図帳』(世界気象機関(WMO)) 2017成層圏雲の分類と記述。極成層圏雲の項目。
- 『Polar Stratospheric Clouds and Ozone Depletion』極成層圏雲とオゾン破壊に関する研究論文。著者・出版年不明のため null。
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よくある質問FAQ
真珠母雲は日本で見られますか?
北海道など高緯度地方で稀に観測例が報告されていますが、日常的に見られるものではありません。
真珠母雲とオゾン層破壊の関係は?
真珠母雲の粒子表面で化学反応が起こり、オゾンを破壊する活性塩素種が生成されることがあります。極域の春季にオゾンが減少する一因とされています。
真珠母雲の高さはどのくらいですか?
成層圏下部の高度約20〜30kmです。通常の対流圏の雲よりはるかに高い位置にできます。
最終更新: · 編集: そらのなまえ 編集室